ネインは APlay の第1世代の販売を開始し、同時に次モデルの開発を進めています。先日発表された AirPods は、ワイヤレス・イヤフォンの進化の過程としてインパクトのあるプロダクト。色々考えることがありました。
インターネットの新しいインタフェース
これまでPCで利用していたインターネットのインタフェースが変わった瞬間は、iPhone の誕生。これによって、Windows OS から、OS X / iOS へのシフトがどんどん進んでいった。
スマートフォンは、音楽、電話、インターネットを利用できるデバイス。iPhone はそれらを革新的なタッチパネルで利用できるようにした。入力としてレイテンシーが少なく繊細なタッチに対応したタッチパネル。出力としてリアリティーにこだわったRetinaディスプレーに進化していった。
ヒアラブルは、音楽、電話、インターネットを利用できるデバイス。AirPods はそれを音声入力で利用できるようにする。入力としての音声認識精度にこだわり、出力として滑らかな音声合成に進化し続けている。
シンプルにこだわり、極限まで削ることで生まれることで生まれる技術的な制約を超え、新たなイノベーションを生み出す、というのがアップルが示したこと。iPhone が出る前のスマートフォンはハードウェアのキーボードを搭載していた、その存在を否定したことで、全面タッチパネルの iPhone が生まれた。
イヤフォンには3つのボタンがあり、ケーブル接続だった。ボタンを無くし、ケーブルをなくした。無くしたことで、音声入力で操作する AirPods が生まれた。もちろん Apple Watch があることによって、体験が補完されるというのも想定されているとは考える。
どんな状況でも使えるインタフェース
スマートフォンはインターネットどこでも使えることが大きな特徴、ただ、どんな状況でも使えない。どんな状況でも、を叶えるために、IoT や AI が力を発揮し、自動運転、Amazon echo、スマート・ロックなど、スクリーンから解放する技術開発が進んでいる。その一つがヒアラブルと考えています。
ただ、その革新的なインタフェースが音声入力かというとそうでもないと考えています。音声入力は EarPods でも使えたものだが、実際に利用するシーンは文字入力をするときに限られている。
音声インタフェースは、技術以上に適した利用空間が必要になる。自宅、車が適している。最近、プロダクトとして最も成功した例は Amazon echo。しゃべって Pandora を再生してくれるスピーカーが、シーンと用途にマッチした。車も元々ニーズはあったが、最近になってやっと満足できるレベルに近づいてきている。
一方で、モバイルはそうではない。少なくとも日本の電車の中では利用できず、万能ではないのは明らか。そうなると、音声インタフェースは、ハードウェア・キーボードと同じ存在と考えられます。必要ではあるが、常に使うわけではない。使いたいときに使えればよいということ。
iPhone のキーボードは必要なときに出て、必要ないときにはなくなる。キーボード入力ではなく、フリックやスワイプといったタッチ入力の方が重要になる。
重要になってくるのは、音声ではなく、コンテキスト。つまり、人の行動把握を入力にすることに気づいた。コンテキスト・センス、Apple、Google がやっていないわけではありません。むしろ進んでいます。Siri のプロアクティブ動作、Google の Google Now です。
しかし、それらはあくまで スマートフォンの操作体験を高めるためのもので、AirPods のセンサーを見ても、そこまで想定されているとは思えない。やはり、iPhone 、Apple Watch ありきと考えられる。
APlay は、インターネットの新しいインタフェースになることを想定している
私たちは、どんな状況でもインターネットに繋がる、というゴール一点を見て技術をつなぎ合わせ、最適化することで、唯一無二の体験を作ろうとしています。
以前のブログでも書きましたが、ヒアラブルというデバイスは、ウェアラブル・コンピュータ。スマートフォンがモバイル・コンピューターに対して、ウェアラブルにになりずっと身につけるコンピュータになるという点が大きな変化です。
どんな状況でも、を考えた場合に、ヒアラブルの役割は非常に大きい。
コンテキスト・センスによる音声プッシュ
先に書いた様に、コンテキスト・センス。つまり、人の行動を入力とする。その人が何をしようとしているかを捉え、必要な情報を自動提示するといったインタラクションが、音声よりも重要になってくる。
例えば、朝 APlay を耳に装着すると、天気、今日の予定、出発時刻を教えてくれ、駅についたら何分後に電車が来るか教えてくれる。電車に乗っているときに運行情報の変化を教えてくれる。メッセージが来たら教えてくれて、中身を読み上げ、いつでもすぐに返信できる。それを、朝ごはんを食べ、葉を磨き、駅で歩いているとき、電車に乗っているときに、その行動を妨げずに行える。
シンプルを実現するための複雑さ
多くは明かしませんが、APlay の第2世代は、そのコンテキスト・センスの活用が必須と考えており、少なくとも下記の様なデバイスになると考えています。
- ケーブルが一切ないステレオ・ワイヤレス
- ハードウェアボタンはなし
- コンテキスト・センスによって、情報が自動で流れてくる
- 必要なタイミングで音声入力
- iOS / Android 対応
さらにメディア・コンテンツへのアクセスも、今までの常識を変えるものにしようとしています。
また、ケーブルレスについては色々議論がありました。イヤフォンを外したときに、それをどうするか。それが課題でした。ただ、一旦極限までシンプルにし、出てきた課題を色んな角度から考える事、それがイノベーションにつながると考え、一旦すべてを削除することにしました。
当初、年内に現行モデルを iOS 対応するプランを考えていました。しかし、資金面の目処がつかず。次のモデルの開発も迫ってきて、時期がかぶってきました。第2世代に集約し、それを革新的なモデルにすることに集中したいと思います。iOS をお使いの方は APlay の体験をなかなかできず恐縮ですが、もうしばらくお待ちください。
忙しくても使えるデバイスであること
スマートフォンの基本価値は、生活の生産性を向上するために便利。エンタテイメントのための道具ではない。
スマートフォンは元々、どこでもメールをチェックできることが大きな実用価値でした。ビジネスピープルの勢いによって支えられてきたデバイスです。毎日の生産性を上げることで、仕事、生活の効率を向上させるため。エンタテイメントのためのデバイスは必須ではないため、PSP や 3DS 以上に普及させることはできない。
生産性を向上するため、インターネットにつながっていないと生きられない存在になってきています。メガネやコンタクトは、必要な矯正するウェアラブルです。身につければ、必要なスマホと同じ感覚になれ、スマホより自由に行動できるウェアラブルがあれば、身につけないわけがない。身につけないのは、それがまだ同じ感覚を生み出せるに至っていないから。したがって迷う理由はありません。なければ作ればいいんです。その方が快適に生活にできるのだから。
APlay でも生活の生産性を向上する。クリエイティビティーあふれる、夢を追いかけている若い世代が、スクリーンに縛られず自由に行動し、パフォーマンスを発揮できるようになるはず。
描いている人物は、映画で アン・ハサウェイが描く主人公です。とにかく夢を追いかけて頑張っている若い世代。彼ら、彼女らが、APlay を必須のツールとして毎日を駆け回るような世界を作っていきたい。というのが思いですし、映画の彼女が使えるシンプルなデバイスにする必要があると考えています。
さらに、私は深セン出張によく行きますが、そこで見る子供の多さ、若者の多さに驚かされます。さらに、若い世代ほどコミュニケーション量が多い。日本、サンフランシスコ、ニューヨークだけでなく、アジアの若者が迅速にコミュニケーションするためのツールとして活用してもらう絵を描いています。
APlay を世界へ
WiForce の見積もりでは、ヒアラブル市場は 2020 年に 2兆円ほどになると見積もられています。現在、ヘッドフォン市場は 1兆円弱で、Beats が市場の牽引車であり 15% ほど。一方で、日常よく見る iPhone の標準イヤフォンをカウントすると、トップはアップルになるかもしれませんが。戦えるプロダクトがあれば、可能性は開かれており、ヒアラブルの先行者になるには今がそのタイミングです。
ヘッドフォンでは、市場をリードしている Beats に対抗するため、各社同様のアーティスト・ブランディングをぶつけようとしていました。私は、Beats はアーティストブランドというよりも、優れたテクノロジーとデザイン、それを第一線のパフォーマーが支持したことが大きいと感じています。
APlay は、革新的なテクノロジーと、優れたデザインを大事にする。それによって、目利きのユーザー、先程の映画の主人公の様な第一線のクリエイターが不自由なく使えるようなデバイスになることで、市場を獲得していこうと考えています。
正念場
一方で、現在ネインは、アップルで言うと、APPLE I を開発し、APPLE II を開発しようとしているフェーズです。APPLE I を BYTE SHOP で売り、少し資金を得たが、APPLE II を開発するには、より多くの資金が必要になり、スティーブ・ジョブズは、マイク・マークラに出会った。
ネインもクラウドファンディングによる支援を受け、販路を増やして少しずつ売上を建てようとしているところです。なんとか初回生産はできましたが、といっても追加生産するにもお金は必要。生産資金がないため、自転車操業で年内なんとか 2000台程度を見込めるかという状況です。それでは、次の革新的な APlay を作るための開発費は賄えない。APPLE II 同様に第2世代で革新的な商品を世の中に出すため、資金調達を進めています。
ヘッドフォンの成長は beats が牽引していました。ワイヤレス・イヤフォンはさらに成長している領域で、同じ工場を使っているメーカーで3年で100億の売上に成長している企業もあります。私たちは、ヒアラブルという新しい領域で、市場を開拓していきます。
さらに未来へ
冒頭で、音楽、通話、インターネットがスマートフォンの機能としましたが。ヒアラブルで仮に同様のことができるとすると、「電話」というデバイスそのものの存在も変わってくると考えています。
おそらく、スティーブ・ジョブズならそこまで行くでしょうし、ネインもそこまで見て進めています。